日本社会福祉学会関東部会

日本の高齢者に対する心理的・社会的ケアの効果に関するエピデンスの検討~科学的根拠に基づくソーシャルワークの実現に向けて~


 加藤利佳子 (首都大学東京大学院)


 抄録

高齢者福祉分野のソーシャルワーカーの行う実践領域として高齢者に対する心理的・社会的なケアをとりあげ,それらの効果を評価する基準を設定して先行研究から抽出されたエビデンスの評価を行った.

また,比較試験を行っている研究結果を分析し,高齢者に対する心理的・社会的ケアに関する実践ガイドラインの作成に向けた基礎資料を提示することを目的とした.

検討の結果,比較試験を用いた研究の不足や,実施対象,目的の偏りなどが明らかとなった.また心理的・社会的ケアの効果として,認知機能の改善など16項目があげられたが,文献数の不足からガイドライン作成に向けたエビデンスとするには非常に不十分であることが判明した.現存するエビデンスを有効に利用していくためにはまずエビデンスを得ることからはじめなければならず,「科学的根拠に基づく実践」(Evidence-based practice)の重要性や手法を広く普及していく必要性が示唆された

Key Words:心理的・社会的ケア,科学的根拠に基づく実践,ガイドライン,回想法,音楽療法

社会福祉学評論(7):11-24、2007


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