長期経過した小児がん患者の「語り」にみる 病体験のプロセス―本人インタビューの TEA 分析から―
小俣智子 (武蔵野大学人間科学部社会福祉学科)
抄録
本研究の目的は,生存率が高くない時代に発症した長期経過小児がん患者の語りから病
体験のプロセスを可視化し,僅少な資源の状況にあってどのような支援が存在したのかを病
体験の様相と共に明らかにすることである.3 名の長期経過小児がん患者へのインタビュー
のデータを複線径路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach)を用いて分析
した.その結果から,病体験を第 1 期〔発症・治療に耐える〕,第 2 期〔自己流で対処する〕,
第 3 期〔病気と向き合い対峙する〕,第 4 期〔病気を受け入れて共存する〕,第 5 期〔支援す
る役割を担う〕の 5 つに分割し可視化した.また支援の実態として,①治療に耐え病気説明
が不十分な状況への対処法「病気や状況から背ける力」,②ライフイベントを契機に能動的意
識・行動へと「変容する力」,③仲間(ピア)の力の 3 つが明らかになった.