ソーシャルワークにおける「自己決定」と「意思決定」の理論構造の検討―日本における意思決定の支援に関する ガイドラインの 2 つの類型―
安西 美咲 (法政大学大学院人間社会研究科人間福祉専攻 博士後期課程/和泉短期大学児童福祉学科)
抄録
本研究は,「自己決定」及び「意思決定」の概念整理を行うとともに,日本で示されている代表的な4つの意思決定の支援に関するガイドラインを比較検討することで,日本における意思決定の支援の課題を明らかにすることを目的として行った.先行研究を基に,「自己決定」を“人権として尊重”するもの,「意思決定」を“能力として支援”するものとして,2つの理論構造を整理した.それを踏まえ4つのガイドラインの比較検討を行った結果,(1)権利として自己決定を尊重するための支援者の心構えを示す《決定・結果重視型》のガイドラインと,(2)能力としてある意思決定を支援する手段を示す《プロセス重視型》のガイドラインの2つに類型化された.ソーシャルワーク実践においては本来どちらの理論も重要であるはずだが,その整理がされないまま“意思決定の支援”としてガイドラインが示されることで,支援の混乱と課題が生まれていることが示唆された.