母親クラブへの国庫補助制度導入の影響
植木信一 (東洋大学大学院)
抄録
母親クラブは,1948年に制度的根拠を得ていたにもかかわらず,1970年代までほとんど増設されていない.それが1973年から急増し,地域的な展開をはたすことができた.その理由を国庫補助制度導入との関係で,調査研究により分析した.調査の結果,(1)国は,1970年代に地域や家庭の機能を維持あるいは育成することを念頭に,すでに存在していた母親クラブに着目して再活用し家庭対策を図ろうとした.(2)母親クラブは,子育て支援の担い手であると同時に母親教育のための活動組織であるという特徴があり,家庭対策をはたすことができると判断された結果,1973年に国庫補助制度によって増設された.(3)国が国庫補助制度によって母親クラブを官製化することで,母親を健全育成事業の担い手として活用するとともに国の求める母親教育や母親像の浸透をはたすという意図を実現した.結論として,国の児童健全育成施策の意図と対象への浸透の方法について明らかにすることができた.