日本社会福祉学会関東部会

「障害」の肯定/否定をめぐる論議とビア・カウンセリングの意義


 山岸倫子 (東京都立大学大学院)


 抄録

本稿では,「障害」の肯定/否定について,障害学の議論をふまえて整理し,その問題点の具体的な様相を述べる.さらに,障害者の自立生活運動におけるビア・カウンセリングの試みがその問題を克服しうるものであることを指摘する.

「障害」の肯定/否定という論議には,複数の解釈可能性が存在するにもかかわらず,社会的責任の放棄へとつながる「デイスアビリテイの肯定」という位相でのみ解釈されやすいという問題がある.このような状況では,当事者は「障害」について自由に語ることができない.

ビア・カウンセリングとその実施主体である自立生活センターには,上記の問題に対応可能な特徴が存在する.①否定的な自己規定から脱却するための言いまわし,②「障害」についての見方を押し付けないビアという理念,③当事者を固定しない姿勢,である.

①,②は,当事者による「自由」な語りを促進し,③は,その語りを社会に発信し,浸透させる可能性を有している.

Key Words:心理的・社会的ケア,科学的根拠に基づく実践,ガイドライン,回想法,音楽療法

社会福祉学評論(7):25-36、2007


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