日本社会福祉学会関東部会

ソーシャルワーカー養成実習におけるソーシャルワークの価値伝達の重要性とその課題~実証研究の文献レビュー~


 石川和穂・今井朋実 (東京福祉大学)


 抄録

 本研究は、北米の大学の社会福祉学部及び社会福祉学大学院において必修科目となっている実習を履修する学生を担当する現場の実習指導者の教育的背景と、実習指導の質との関係について扱った実証研究の結果を比較検討し、ソーシャルワーカー養成実習の質的要因を明確にし、実習教育の質を強化するための条件整備について提案を行う試みである。先行研究の調査データ分析した結果、実習指導者の教育的背景とその指導方法・技術にはほとんど関連性がない、社会福祉学学位を取得した実習指導者はこれを取得していない者よりも強固なソーシャルワークの価値観に基づいて指導を行っていることが示唆きれた。この結果は、ソーシャルワーク実習が、通常の職業訓練とは異なり、実習生にその職業的価値観を伝えることによって福祉専門職として社会化を促すという教育的機能を果たしていることを示している。専門職養成としての実習教育の位置づけを明確にしている北米と、日本の実習教育の質の管理方法を比較した場合、重大な相違点は、日本では「どの施設・機関で実習を行うか」を規定する一方、北米では「誰が現場で実習指導を行うか」を限定している点にある。実習指導者をソーシャルワーカーとしての職業倫理を体得した者に限定することは、実習教育の質の確保に貢献し、また、倫理綱領における価値観の明確化とソーシャルワークの価値観に関する効果的な教育方法の開発が今後の課題であると考察された。

Key Words:実習教育,専門職としての社会化,ソーシャルワークの価値観,倫理綱領,実証研究

社会福祉学評論(3):45~57、2003


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