重度知的障害者と支援者との良好な関係の 形成過程に関する計量分析
―構造方程式モデリングによる検討―
奥西允 (東洋大学大学院ライフデザイン学研究科)
抄録
本研究の目的は,構造方程式モデリングを用いて,支援者の視点から重度知的障害者
との良好な関係の形成過程を検証することである.本研究では,利用者との間で起こった出
来事の蓄積が,支援者の利用者に対する特定の意味づけを形成し,その意味づけが支援者の行
動を方向づけるという作業仮説を設定した.方法は,支援者を対象とした質問紙調査である.
その結果,支援者の視点からは,良好な関係の形成過程を構成する経路は,大きく二つ存在す
ることが明らかとなった.一つは,「利用者の変化」という出来事の蓄積から「利用者理解」
という意味づけを経由し,関係促進行動に至る経路であり,もう一つは,「支援者の変化」と
いう出来事の蓄積から「利用者への不安や迷い」という意味づけを経由し,関係促進行動に至
る経路である.ただ,「利用者の変化」は「利用者への不安や迷い」に対して負の効果をもっ
ており,結果的に関係促進行動にも負の効果を持っていた.