日本社会福祉学会関東部会

重度知的障害者と支援者との良好な関係の 形成過程に関する計量分析
―構造方程式モデリングによる検討―


 奥西允 (東洋大学大学院ライフデザイン学研究科)


 抄録

 本研究の目的は,構造方程式モデリングを用いて,支援者の視点から重度知的障害者 との良好な関係の形成過程を検証することである.本研究では,利用者との間で起こった出 来事の蓄積が,支援者の利用者に対する特定の意味づけを形成し,その意味づけが支援者の行 動を方向づけるという作業仮説を設定した.方法は,支援者を対象とした質問紙調査である. その結果,支援者の視点からは,良好な関係の形成過程を構成する経路は,大きく二つ存在す ることが明らかとなった.一つは,「利用者の変化」という出来事の蓄積から「利用者理解」 という意味づけを経由し,関係促進行動に至る経路であり,もう一つは,「支援者の変化」と いう出来事の蓄積から「利用者への不安や迷い」という意味づけを経由し,関係促進行動に至 る経路である.ただ,「利用者の変化」は「利用者への不安や迷い」に対して負の効果をもっ ており,結果的に関係促進行動にも負の効果を持っていた.

Key Words:重度知的障害,対人関係,構造方程式モデリング

社会福祉学評論(25):57-71、2024


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