日本社会福祉学会関東部会

重度知的障害者と支援者との良好な関係の形成に関する質的研究―肯定的な感情体験に着目した支援者へのインタビュー調査から―


 奥西允 (東洋大学大学院ライフデザイン学研究科ヒューマンライフ学専攻)


 抄録

 本研究では,重度知的障害者との良好な関係の形成について示唆を得るために,支援者に肯定的な感情が生じる出来事に注目した.具体的には,支援者の肯定的な感情体験とその関連要因を抽出,整理し,その全体像について仮説モデルを構築することを目的とした.重度知的障害のある児童および成人の教育,支援に携わる支援者12名にインタビュー調査を行い,KJ 法を参考に分析した.その結果,以下の点が明らかとなった.肯定的に応答するといった【支援者としての構え】が十分な場合,【肯定的な感情体験が起こる】蓋然性は高まる.肯定的な感情体験には,変化が起こる,気持ちが共有できたといった出来事が含まれていた.肯定的な感情体験は,支援者や当事者の【意欲や変化が生まれる】ことを促す.その意欲や変化が【支援者としての構え】を強化し,【肯定的な感情体験が起こる】蓋然性が高まるという好循環を育んでいく.

Key Words:重度知的障害,肯定的な感情体験,良好な関係

社会福祉学評論(25):70-84、2024


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