施設職員から見た更生施設利用者の支援課題と支援の限界―「要配慮利用者」の計量テキスト分析―
川原 恵子 (東洋大学社会学部社会福祉学科)
抄録
本稿は,2018 年に更生施設職員を対象に実施した有意抽出調査の自由記述回答に関して計量テキスト分析を行い,「要配慮利用者」の 3 タイプ別と男女別の特徴語や共起ネットワークから,更生施設における利用者支援の課題と支援の限界を明らかにし,更生施設の制度設計の見直しに向けてより優先的に取り組むべき課題を明らかにすることを目的とした.その結果,対人関係に課題を抱える個別支援ニーズの高い利用者が増える一方,そのような支援を前提とした職員体制になっていない現状において職員に負荷がかかっていることが明らかになった.さらに集団生活を基底とする施設型支援に必ずしも適合的でない,医療的ケアを含めた個別性の高い支援や丁寧な関わりを要する利用者が一定数存在することが確認され,そのような利用者のニーズと提供される支援の不適合が施設の入退所・病院の入退院の繰り返し,支援の拒絶につながる可能性があることを指摘した.