妊娠葛藤のある母親が自身での養育または養子縁組に託すことを決定する要因の探索的研究―慈恵病院の『SOS 赤ちゃんとお母さんの相談窓口』の事例を通して―
姜 恩和 (目白大学人間学部人間福祉学科)
抄録
2013,2014年度に慈恵病院の『SOS 赤ちゃんとお母さんの相談窓口』に寄せられた5,481 件の相談のうち,相談過程を経て「自分で育てる」または「養子縁組に託す」ことが確認できたケースは 124 件であった.本稿ではこの 124 件について,母親が「自分で育てる」または「養子縁組に託す」決定に至った要因について考察した.ケース記録を用いて,相談の背景 34 個,支援の要素 13 個の計 47 個のキーワードを抽出し,これを 10 個にカテゴリー化した.そのうえで,21 項目を用いて両者の選択に影響を与える要因について,二項ロジスティック分析を行った.その結果,「女性の親族」および「民間機関・病院との連携」が統計
学的に有意な影響がみられ,「女性の親族」の支援が得られる場合は「自分で育てる」割合が高く,「民間機関・病院との連携」では「養子縁組に託す」割合が高くなった.「養子縁組に託す」ケースでは,とりわけインフォーマルな支援を受けられない状況にあり,今後はインフォーマルな支援と公的支援が及ぼす影響についてさらに精査していく予定である.