日本社会福祉学会関東部会

不適切な居住環境(いわゆるゴミ屋敷)にある 高齢者の様相―2タイプへの分類とためこみ行動に着目した検証―


 河合美千代 (ルーテル学院大学大学院 総合人間学研究科社会福祉学専攻(博士後期課程))


 抄録

 本研究は,不適切な居住環境(いわゆるゴミ屋敷)にある高齢者の様相を明らかにすることを目的に,地域包括支援センターの社会福祉士8名に対し半構造化インタビューを行ったものである.分析方法はまず全事例(10ケース)の概要を示し,次いで表にまとめて事例を2群(A群とB群)に分類した.さらにB群についてカテゴリーの生成と分析を行う質的研究法を用いた.その結果,“ゴミ屋敷”の高齢者は広範囲にわたるセルフケアの放任がみられる群(A群)と,過剰なためこみがみられる群(B群)に分けられた.B群の高齢者の特徴は自立度が高く,銭湯の利用や弁当の購入といった消費活動を行って日常生活を維持させていたが,危険認識に乏しく,ためこみによる著しい生活機能障害が存在していた.B群の高齢者のためこみの原因ははっきりしなかったが「ためこみ」という行動障害に着目して“ゴミ屋敷”の高齢者を理解することが重要であることが示唆された.

Key Words:ゴミ屋敷,ホーディング,ためこみ症,セルフ・ネグレクト

社会福祉学評論(18):26-38、2017


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