家族構造の地域性が介護保険制度における 居宅サービスの利用に与える影響
小林哲也 (大妻女子大学人間関係学部人間福祉学科)
抄録
本稿の目的は,家族構造の地域性が介護保険制度における居宅サービス(訪問介護,通所介護,短期入所生活介護)の利用に影響を与えていることを統計的に分析することである.家族社会学においては,日本の家族構造は西日本と東日本で異なり,地域性がみられるという異質論的家族論が指摘されている.そこで,この家族構造の地域性が居宅サービスの利用にも影響を与えており,同様に地域性がみられるのではないかと考えた.
分析の結果,西日本の都道府県は,高齢者の単独世帯や夫婦のみ世帯の割合が高く,訪問介護の利用率が高くなる.東日本の都道府県は,三世代世帯の割合が高く,通所介護や短期入所生活介護の利用率が高くなることが示された.これは,西日本の場合,子の家族介護に期待ができないことから,訪問介護の生活援助を利用しているのに対し,東日本の場合,子の家族介護に期待できることから,家族介護者のレスパイトとして,通所介護や短期入所生活介護を利用しているためと考察し,居宅サービスの利用に地域性がみられると結論づけた.