韓国の一人暮らし高齢者における 老人ドルボミ基本サービスの現況と課題―東京都における見守り支援の考え方を参照して―
趙美貞 (東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科博士後期課程)
抄録
本研究は,公的な高齢者見守り支援の仕組みとして,2007年度から韓国で実施されている「ドルボミ基本サービス」導入の背景と実施過程を扱っている.検討にあたっての分析枠組みとしては,ドルボミ基本サービスの支援対象,支援内容及び提供システム,財政構造を用いている.
考察の結果として,このサービスが韓国政府による全国的な実施体制をとっていることにより,実施システムや責任体制が明確であるという長所が見られるが,半面で日本の取組みと比較すると次のような課題が示された.第一は,ドルボミ基本サービスの対象を,一人暮らし高齢者だけでなく,見守り支援を必要とするすべての高齢者へ拡大するための検討を行うことである.第二は,ドルボミ基本サービスが予防の目的で活用されているため,高齢者の日常生活から制度までの課題を,日常生活エリアに即して検討することである.第三に,ドルボミサービスが基礎的な仕組みになり,保健福祉サービスや老人長期療養保険サービスなどの事業との連携の強化が必要である.最後に,財政支援に当たっては,ますます進行する高齢化に対応するためには,地域住民やボランティアを活用する見守り支援に関する検討が必要である.