地方自治体による外国人への生活支援提供の課題~社会福祉における分権化の視点から~
門美由紀 ( 立教大学兼任講師)
抄録
地域に暮らす外国人を生活者として位置付けての多文化共生施策には①外国人住民への生活支援と,②外国人住民と日本人住民がともに参加できる地域づくりという側面が必要とされる.それは極めて福祉的な課題であり,施策の展開に当たっては社会福祉における分権化の視点から,広域自治体による間接的条件整備機能と,基礎自治体による直接的援助提供機能および間接的条件整備機能の充実が求められる.埼玉県における多文化共生施策の現状は,①広域自治体としての埼玉県による間接的条件整備機能の進展,②基礎自治体としての市町村における間接的条件整備の先行,③埼玉県の外郭団体による間接的条件整備および,市町村自治体に求められる直接的援助提供の補完を担っていることが明らかになった.市町村は,地域で生活を営む外国人住民にとって最も身近な行政であり,直接的援助提供の充実必要性についてより一層の自覚化と,施策化が求められている.