D. F. Krillによる実存主義ソーシャルワークの独自性~米国における実存主義ソーシャルワーク緒論の比較研究~
田嶋英行 (東京都立大学大学院)
抄録
「疎外」に悩むクライエントを援助するために展開されたD.F.Krillによる実存主義ソーシャルワークには,他の論者によるものにはない独自の見解が存在する.本稿ではKrillと,BradfordおよびWeissにおける見解を比較することにより,その独自な点を明らかにする.
実存主義ソーシャルワークの成立要件,すなわち1)「疎外」をクライエントの人間としてのあり方における問題として規定していること,2)クライエントにおける「疎外」の原因を社会的要因に求め,さらに何らかの社会的アプローチによって対応していること,以上2点をこれら3者がいかに満たしているかについて検討をおこなった.その結果,1)は3者ともに満たしているものの,2)はKrillのみが満たしていた.Krillの独自性は,これら2つの成立要件を満たすことによって,より完全なかたちで実存主義ソーシャルワークを成立させている点にある.