日本社会福祉学会関東部会

人の国際移動と福祉問題~中国帰国者と日系ブラジル人の生活実態調査から~


 藤沼敏子 (総合研究大学院大学)


 抄録

 1990年に入管法の改正が行われ、合法的に未熟練就労に就くことが許された存在として「日本人の配偶者等」と「定住者」のビザを持つ外国人が急増した。本稿では、中でも特に、増加の著しい日系ブラジル人と中国帰国者を事例として、人の国際移動の質的変化と福祉問題について検討する。定住化傾向の増大は、教育問題や老後問題等を内包し、労働の場の一時的移動というより生活者の生活圏の移動ということが言える。もはや「デカセギ」ではなく「移民」と捉えるべき時期に来ている。中国帰国者と日系ブラジル人は、概ね「日本人の血」を引くわけであるが、その大半は「外国人」という属性で社会福祉サービスの対象となる。1997年に行ったアンケート調査とインタビュー調査の結果の一部(国籍、アイデンティティー、日本語能力、定住の意志、日本人としての自覚等)を比較分析し、両者のアイデンティティーのあり方と相違点から、それぞれの社会福祉サービスや社会保障の内容を検討し、社会福祉政策の課題を明らかにする。また人の国際移動に伴う定住外国人一般にも当てはまる普遍的な福祉問題を探り、社会福祉政策の今日的課題を検討する。

Key Words:国際移動,中国帰国者,日系ブラジル人,アイデンティティー,移民

社会福祉学評論(1):61~75、2001


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