日本社会福祉学会関東部会

生活保護における社会福祉実践の位置づけをめぐる諸説の構造と展開について~論争期までの議論を対象として~


 根本久仁子 (明治学院大学大学院)


 抄録

本稿は、生活保護における社会福祉実践の位置づけをめぐる議論について、現行生活保護法成立時から論争期までに展開された諸説を対象として、文献研究によって整理考察をこころみたものである。この時期の代表的論者として小山、黒木、小川、岸、仲村、大塚の6名を取り上げた。各論説の分析にあたっては、生活保護において社会福祉実践を議論することの根拠や理由と、論説の中心なり根底にある論者の思想や考え方を把握することを基底におき、それにもとづく論理榊造と展開をとらえることを意図した。そして各説の比較考察をおこなった。

分析の結果、6人それぞれの独自の立場性や問題関心が、所論の構造や展開にも大きく影響していることなどが明らかになった。そして諸説のうち仲村説が評価されることを明らかにした。さらに、生活保護において社会福祉実践を論じるにあたり、生活保護法の目的規定を重大な根拠に議論が展開されていたが、それ以上により制度利用者の生活課題なり生活実態に立脚したところから、実践論を検討していくことの意義を指摘した。

Key Words:生活保護,社会福祉実践,ケースワーク,論争

社会福祉学評論(1):44-59、2001


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