昭和38年「重症心身障害児療育実施要綱」~「措置困難児問題」との関係を中心に~
小埜寺直樹 (東京都立大学大学院)
抄録
本稿は、「措置困難児問題」の具体的対策として設置された「重症心身障害児施設」の最初の運用ガイドラインであった、昭和38年「重症心身障害児療育実施要綱」を概観したものである。その際の分析視点は、①入所児童の決定過程(対象)、②対象の処遇、③施設運営財源の3点であり、これらが「措置困難児問題」にどう対処したかを考察した。その結果、まず入所児童は「措置困難児」を幅広く対象とするよう、あらかじめ枠を設けず、実際の運用における裁量に大きく委ねられていたことが分かった。次に対象にはひとまず療育をするということになったが、その内容・目的とも従来いわれてきた療育とは異なっていた。また基本財源は社会保険各法より調達され、当該対策は保険医療体制の整備と連動していることを示唆した。