日本社会福祉学会関東部会

「障害」の実態的モデルへの批判的アプローチ~構築論的モデルに向けて~


 谷内孝行 (アルファ福祉専門学校)


 抄録

  これまでの障害者福祉論においての「障害概念」の議論の多くは、WHOに代表される「医学モデル」に依拠したものが中心であった。そして、近年では、「障害」がそうした身体や精神にあるのではなく、物理的側面や制度的側面といった「環境側」にあるとする「社会モデル」が注目されるようになってきた。この2つのモデルは、「障害」が指す内容は異なるものの、それらを「客観的事実」として把握することが可能である。本稿では、これらを「実体論的モデル」と呼ぶことにする。

  第1章では、「医学モデル」から「障害」を捉えるWHOや上田による議論を整理し、第2章においては、英国における「社会モデル」の議論をまとめる。そして、第3章では、こうした「実体論的モデル」に対し、「障害」をある時代、ある社会によって「障害」と名付けられた「社会的事実」として捉える「構築論的モデル」を検討する。そこから「障害」といった「現実」を文化的差異と捉える方法を探りたい。こうした「差異」を明らかにする作業を通し「健常者」と「障害者」が「共に」生きる、新たな社会を築くことができると思われる。

Key Words:医学モデル,社会モデル,社会的構築主義,差異,障害者文化

社会福祉学評論(1):2-13、2001


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