フランスの子育て支援制度についての研究―「親をすることへの支援」概念を中心に―
安發明子 (立命館大学人間科学研究科博士後期課程)
抄録
フランスの子育て支援制度の価値背景を明らかにする目的で,中心的な概念となっている「親をすることへの支援」に着目した.本研究では,公的資料などの文献調査に,筆者が実施した現地調査で得た知見も補足として加え,子育て家庭を対象とした福祉を重層的に分析した.その結果,公的機関は全ての妊娠中の女性と子どもを福祉の対象とし,ソーシャルワーカーなどの専門職が子どもの権利が守られていることを保障する役割を担っていることが明らかになった.「親をすることへの支援」は子どもの成長のためのより良いケアと教育を専門職が親と話し合い,具体的に支えることで,子どもを支える親を支えようとしている.専門職には家庭への監視と支援双方の意味があると捉えられているが,親の子育て経験が子どもにとっても前向きなものとなることを目指していた.