日本社会福祉学会関東部会

中国における社会的養護と里親委託―なぜ障害児が多いのか―


 柴 ラク (東洋大学福祉社会デザイン研究科)


 抄録

 中国では障害児家庭への経済的な支援も社会的支援も非常に限られているため,家族の責任が中心になっている.そのため,親は経済的・心身的な負担が大きく,さらに政策上の問題や伝統的な思想等を背景に,帰結として,障害児の遺棄につながっている.遺棄された障害児は社会的養護の体系のなかで,実質的な児童養護措置に関わる判定機関とともに施設養育機能と里親委託業務も果たす福利院に入所している.福利院に入所している児童が里親委託の対象となるわけだが,福利院に在籍している児童には疾病や障害のある者が圧倒的に多いため,結果として,里親委託とされる児童に障害児が多くなるという関係性が見られた.その意味で,中国の里親委託で障害児が多いという現状は,里親委託だけの特徴にとどまらず,社会的養護全体の特徴であるとも考えられる.

Key Words:中国,社会的養護,里親委託,障害児,遺棄

社会福祉学評論(21):52-65、2021


コンテンツ一覧へ移動