日本社会福祉学会関東部会

韓国の「福祉死角地帯」としての農村部高齢者層への自殺予防の試み―住民主体による「マウルコミュニティモデル」の事例を通して―


 金 信慧 (立教大学大学院 コミュニティ福祉学研究科(博士後期課程))


 抄録

 本研究は,韓国の「福祉死角地帯」としての農村部高齢者層への自殺予防に焦点をあてている.本稿の目的は,韓国農村部におけるマウルを基盤とした自殺予防の試みについて京畿道加平郡の事例に着目し「マウルコミュニティモデル」を提示し,マウルを基盤とした自殺予防の持つ意義を明らかにすることにある.韓国の農村部にはいまだに伝統的な地域を基盤とした地域共同体としてのマウルが存続している.しかし,本稿ではマウルを伝統的地域共同体ではなく,構築するコミュニティとして取り上げ,その実態を把握するために自殺予防センター職員,清平4 里里長にインタビュー調査を実施した.その結果,住民主体による実践変革型コミュニティとしての「マウルコミュニティモデル」は,「福祉死角地帯」に位置する農村部高齢者の自殺予防のための新たなソーシャルキャピタルの形成や蓄積につながり,自殺予防に貢献する可能性を明らかにした.

Key Words:福祉死角地帯,高齢者自殺,自殺防止,コミュニティ,ソーシャルキャピタル

社会福祉学評論(21):26-37、2020


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