日本社会福祉学会関東部会

英国の児童虐待対応の研究動向におけるThresholdsの定義について―機関間連携へのつなぎの開始点としての考察―


 池田 紀子 (ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科社会福祉学専攻博士後期課程)


 抄録

児童虐待対応でリスクアセスメントを行う専門職は,介入などの行動に向けたthresholds(入口,閾値)の意思決定を行う必要がある.本研究では,機関間連携に向けたつなぎの開始点としてのthresholds の定義を検討するため,英国の研究と実践においてthresholds の用語が広範に使われていることに着目し,thresholds の用語を用いている英国の児童虐待対応に関する文献レビューを行った.調査結果からは,【①アセスメントのレベル分けとして用いられるthresholds】,【②行動開始の意思決定のポイントとしてのthresholds】,【③送致する側と送致される側の間で発生するthresholds のずれ】の3 つのフレームワークが分類された.結論として,thresholdsは,「専門職が次の到達点へ向けて行動を開始するのは今だと意思決定するレベル」と定義された.専門職間でアセスメントのずれが生じ連携が滞ったとしても,thresholds の合致を見出そうとするプロセスを通し,連携の統合に向けた支援を続けていくことが現場で求められていると考える.

Key Words:児童虐待,ネグレクト,スレッショルド,連携,意思決定

社会福祉学評論(19):64-75、2018


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