韓国の公的扶助制度における労働と福祉の連携 ―「労働能力のある者」への給付に着目して―
松江暁子 (国際医療福祉大学 医療福祉学部 医療福祉・マネジメント学科)
抄録
1990年後半,韓国では普遍的な公的扶助制度が導入された.同制度は,労働と福祉の連携を強く意識した仕組みとなっている.その連携の中身をみると,ワークフェア的な要素とアクティベーション的な要素を併せ持つことが最も大きな特徴といえる.これは,労働と福祉の連携を重視しながらも,ワークフェアかアクティベーションかという異なる政策理念が衝突する近年の先進諸国の福祉国家改革をめぐる議論からして非常に興味深いケースである.韓国の公的扶助制度は,いかなる意味で両要素が同時に含まれているのか,なぜそうなったのか,そしてその帰結は何かなどを明らかにすることは,日本を含む先進諸国における福祉国家改革の行方を考えるうえで重要な示唆点を提供するに違いない.