日本社会福祉学会関東部会

成年後見制度の市町村長申立てにおいて中間集団が果たす機能


 税所真也 (東京大学大学院人文社会系研究科社会文化研究社会学専攻博士課程)


 抄録

 成年後見制度における第三者後見人の比率が高まっている.なぜ,どのような状況において,市町村長申立てによる成年後見制度が利用されているのだろうか.本研究は,インタビュー調査を用いて,この問いに答えることを目的とする.
 分析対象は,成年後見制度の利用支援組織が全国的にもとくに発達した岡山県の専門職ネットワークである.本分析の結果,人びとが成年後見制度の利用に否定的な意識をもち,親族が成年後見制度の申立人になろうとしないなか,専門職ネットワークが,行政による市町村長申立てに大きく関与するシステムを構築し,以下の機能を果たしていることを本稿は指摘した.すなわち,「親族と行政間における媒介機能」と「法制度と行政間における媒介機能」である.これにより,専門職ネットワークが,成年後見制度の利用に否定的な人々を市長申立てによって制度利用へと結びつけ,家庭内への行政の介入を後押ししていることを明らかにした.

Key Words:成年後見制度,市町村長申立て,中間集団,専門職

社会福祉学評論(16):1-14、2016


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