離別母子世帯の転居問題 -不動産仲介業者の声を通して-
東景子 (首都大学東京大学院博士後期課程)
抄録
本稿は不動産仲介業者の「声」を通して,民間賃貸住宅への転居を希望する離別母子世帯が,不動産仲介業者からどのような「眼差し」を受けているかを捉え,その「眼差し」が要因となり入居制限を受けることがあるのか,その実態を明らかにすることを目的としている.その結果,①貧困のイメージを持つ世帯②騒音トラブルが懸念される世帯という「眼差し」を不動産仲介業者から受けていることが明らかになった.加えて,生活保護制度を受給することや離婚経験者であることが,不動産仲介業者から批判的な「眼差し」を受ける可能性もあることがわかった.離別母子世帯は対応にあたる不動産仲介業者の「眼差し」に大きく影響を受けやすい世帯類型であり,民間賃貸住宅における離別母子世帯の転居は,不動産仲介業者が離別母子世帯に対して好意的か否かにより,住宅確保の明暗が分かれることが考察された.