退院前訪問指導におけるソーシャルワーカーの介入プロセス -病者役割からの離脱を促す主・客置換アプローチ-
有原正悟 (安房地域医療センター医療福祉相談室)
抄録
関東圏郊外の中規模急性期病院にて参与観察を行い,退院前訪問指導における ソーシャルワーカーの介入プロセスを探索的に調査した.修正版グラウンデッド・セ オリー・アプローチによる分析の結果,そのプロセスは,事前準備段階で行う【場の しつらえ】と,実施段階で行う【主・客置換アプローチ】で構成されることが明らか になった.【場のしつらえ】は,訪問意図の明確化をし,退院前訪問指導における参 加メンバーと時間を最適化するものである.【主・客置換アプローチ】とは,ソーシ ャルワーカーが主で患者が客,という入院中に形成した関係性を,自宅の場を活用し た10 の関わりにより逆転させ,患者を主に据えようとする働きかけである.生態学 的視点からの考察では,【主・客置換アプローチ】は,入院患者の病者役割からの離 脱を促すことで,より実生活に即した退院支援の実践に示唆を与えるものであると考えられた.