小河滋次郎の初期保護思想に関する考察 -「社会公共」に着目して-
益田幸辰 (東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科社会福祉学専攻博士後期課程)
抄録
本論は,小河滋次郎の『監獄学』の分析・検討を通して,彼の初期保護思想の特徴の一端である「社会公共」を考察し,当時の社会思想,なかでも社会有機体思想と初期社会主義思想における小河の思想の位置づけを試みようとした.研究方法は,小河をはじめ同時代の思想家の原典をもとに分析検討した.研究の結果,小河の初期保護思想は,当初有機体思想が基盤になっていたが,監獄改良事業を見聞し,『監獄学』を著すなかで,出獄した直後の貧しい生活に追い詰められている人々を支援する思想として酒井を始めとする初期社会主義思想に対して関心をもち,これらの思想をつなぐものとして「社会公共」という考え方が創出されたと考える.